五大栄養素とは?
その働きや種類、食生活への役立て方を紹介
五大栄養素とは?その働きや種類、食生活への役立て方を紹介
私たちの体は、食べたものを原料として作られます。そのため、健康を維持し、毎日を元気に過ごすためには、食事の内容が重要です。しかし、バランスの良い食事といわれても、具体的に何をどのように食べればいいのかわからない方も多いのではないでしょうか。
そこでとり入れたいのが、「五大栄養素」という考え方です。この記事では、五大栄養素の種類とそれぞれの役割のほか、食生活に取り入れるための具体的な方法を紹介します。五大栄養素を意識して日々の食生活を見直し、すこやかな体を目指しましょう。
五大栄養素の特徴と役割
五大栄養素とは、「炭水化物」「脂質」「たんぱく質」「ビタミン」「ミネラル」の5つのことをいいます。これらの栄養素がバランス良く働くことで、私たちの体は健康を維持し、成長を続けることができるのです。まずは、それぞれの栄養素の特徴と役割について紹介します。

炭水化物:体や脳を動かすエネルギー源
炭水化物は、体や脳を動かす主要なエネルギー源となる栄養素です。炭水化物は糖質と食物繊維からできており、糖質は体内で素早くエネルギーとして利用されます。
一方、食物繊維は消化されにくいため、腸内での糖質の吸収を緩やかにしたり、便の量を増やしたりする働きがあるのです。
たんぱく質:体を構成する原料となる
たんぱく質は、肉や魚、卵などに多く含まれる栄養素で、私たちの体を構成しています。筋肉、臓器、皮膚、髪の毛、そしてホルモンや酵素などの体の機能を調整する成分も、たんぱく質から作られているのです。
私たちの体のたんぱく質は、20種類のアミノ酸の組み合わせでできているとされます。そのうち9種類は、体内で作ることができないため、必ず食事から摂取する必要がある「必須アミノ酸」です。残り11種類の「非必須アミノ酸」は、体内で合成できるため必ずしも食事から摂取する必要はありませんが、体調や成長段階によって不足することもあります。
そのため、さまざまな種類のたんぱく質を摂取し、必須アミノ酸と非必須アミノ酸をバランス良くとり入れることが望ましいでしょう。
脂質:体を動かすエネルギー源や細胞膜・ホルモンの材料となる
脂質は油脂類に多く含まれ、体を動かすエネルギー源となるだけでなく、細胞膜やホルモンの材料にもなる栄養素です。
脂質は、主に動物の脂肪に多く含まれる「飽和脂肪酸」と、植物油や魚の脂肪に多く含まれる「不飽和脂肪酸」に分けられます。それぞれ、体内での働きや健康への影響が異なるため、バランス良く摂取することが大切です。
ビタミン:体の機能を円滑に動かす
ビタミンは、体の機能を動かすための潤滑油のような役割を果たす栄養素です。体内のさまざまな機構で利用されるため、食事からしっかり摂取する必要があります。
ビタミンは、水に溶けやすい「水溶性ビタミン(ビタミンB群・Cなど)」と、油に溶けやすい「脂溶性ビタミン(ビタミンA・D・E・K)」に分けられます。
ミネラル:骨や歯を作り、体の調子を整える
ミネラルは無機質とも呼ばれ、骨や歯、血液など、体の主要な組織を作る栄養素です。体の調子を整える役割も果たしています。
ミネラルに分類されるのは、カルシウム、鉄、マグネシウム、亜鉛といった成分で、神経や筋肉の機能調整など、重要な役割を担っています。
五大栄養素がもたらす健康への影響
五大栄養素は、体のエネルギー源や構成材料、調整役として互いに連携し、私たちの健康を支えているため、バランス良く摂取することが大切です。
ここでは、栄養素が不足した場合と、過剰に摂取した場合にどのような影響があるのかについて見ていきましょう。
五大栄養素が不足している場合
五大栄養素が不足すると、どのような影響があるのでしょうか。例えば、たんぱく質の不足は筋肉量の低下や免疫力の低下につながったり、ビタミンやミネラルの不足は特定の欠乏症を引き起こすリスクを高めたりします。
また、栄養素は連携して働くため、エネルギーの原料となる炭水化物や脂質が足りていても、これらの原料をうまく使ったり、分解したりするビタミンB群が不足すると、エネルギーの低下を招くことがあるでしょう。
こうした、五大栄養素の不足による代表的な症状をまとめました。
■主要な五大栄養素の欠乏症
| 五大栄養素 | 栄養素 | 症状 |
|---|---|---|
| 炭水化物 | 糖質 | エネルギー不足、低血糖、疲労感、集中力低下 |
| 脂質 | 必須脂肪酸 | 皮膚炎、成長障害、免疫低下、エネルギー不足 |
| たんぱく質 | 必須アミノ酸 | 成長障害、筋力低下、免疫低下、浮腫 |
| ビタミン(脂溶性) | ビタミンA | 網膜色素変性、皮膚・粘膜の乾燥、成長障害(小児) |
| ビタミンD | くる病(小児)、骨軟化症(成人)、骨粗しょう症 | |
| ビタミンE | 末梢神経障害、筋力低下 | |
| ビタミンK | 出血傾向、血液凝固遅延 | |
| ビタミン(水溶性) | ビタミンB1 | 脚気、倦怠感、食欲不振 |
| ビタミンB2 | 口唇炎、舌炎、皮膚炎 | |
| ビタミンB6 | 皮膚炎、神経障害 | |
| 葉酸 | 巨赤芽球性貧血、胎児の神経管閉鎖障害 | |
| ビタミンB12 | 巨赤芽球性貧血、神経障害 | |
| ビタミンC | 壊血病、免疫低下 | |
| ミネラル | カルシウム | 骨粗しょう症、骨軟化症 |
| 鉄 | 鉄欠乏性貧血、集中力低下 | |
| マグネシウム | 筋けいれん、不整脈 | |
| 亜鉛 | 味覚障害、皮膚炎、免疫低下、成長障害(小児) |
五大栄養素を過剰摂取している場合
五大栄養素は不足だけでなく、とりすぎにも注意が必要です。例えば、脂質や糖質の過剰摂取は、肥満や糖尿病、脂質異常症などの生活習慣病のリスクを高めます。
ビタミンの場合、水に溶ける水溶性ビタミンは過剰分が尿として排出されるため、あまり過剰症を心配する必要はありませんが、脂質に溶けやすい脂溶性ビタミンは体外に排出されにくいため、過剰症に注意が必要です。
五大栄養素の過剰摂取による代表的な症状を、下記にまとめました。
■主要な五大栄養素の過剰症
| 五大栄養素 | 栄養素 | 症状 |
|---|---|---|
| 炭水化物 | 糖質 | 肥満、糖尿病、脂質異常症 |
| 脂質 | 必須脂肪酸 (オメガ3、オメガ6) |
過剰摂取で炎症促進や出血傾向(特にオメガ6の過剰は炎症性疾患リスク増) |
| たんぱく質 | 必須アミノ酸 | (高用量で)腎機能負担、骨カルシウム流出増加 |
| ビタミン(脂溶性) | ビタミンA | 頭痛、吐き気、肝障害、妊娠中の胎児奇形 |
| ビタミンD | 高カルシウム血症、腎障害 | |
| ビタミンE | 出血傾向(抗凝固薬との併用時) | |
| ミネラル | カルシウム | 高カルシウム血症、腎結石 |
| 鉄 | 鉄沈着症、肝障害 | |
| マグネシウム | 下痢、腎障害 | |
| 亜鉛 | 嘔吐、免疫低下、銅欠乏 |
五大栄養素を多く含む食品の効率的なとり方
五大栄養素を日々の食生活に役立てるには、どのような食品をどのようにとれば良いのでしょうか。ここでは、それぞれの栄養素が多く含まれる食品と、効率的なとり方を紹介します。
五大栄養素を多く含む主な食品
まずは、五大栄養素がどの食品に多く含まれているか見ていきましょう。下記の表に、主な食品を挙げます。
■五大栄養素を多く含む主な食品
| 五大栄養素 | 栄養素が多く含まれる食品 |
|---|---|
| 炭水化物 | 米、パン、麺類、いも類 |
| 脂質 | 肉の脂身、魚の脂、植物油、ナッツ類 |
| たんぱく質 | 肉、魚、卵、大豆製品、乳製品 |
| ビタミン | 野菜、果物、穀物、肉、魚 |
| ミネラル | 乳製品、海藻、魚、貝 |
五大栄養素をバランス良く摂取する
五大栄養素をバランス良くとるための基本的な方法は、主食・主菜・副菜をそろえることです。これにより、自然に多様な食品を使え、栄養バランスを整えることができます。
<献立の例>
・主食:米飯やパンなどで炭水化物がとれる
・主菜:魚・肉などでたんぱく質や脂質がとれる
・副菜:サラダ・小鉢などでビタミンやミネラルがとれる

また、栄養素の吸収を助ける食品を組み合わせることも効果的です。例えば、ビタミンCは鉄の吸収を高めるので、鉄を多く含む肉や魚と、ビタミンCが豊富な野菜や果物をいっしょにとるのがおすすめ。脂溶性ビタミン(ビタミンA・D・E・K)は脂質といっしょにとることで吸収が良くなるため、ビタミンAを多く含む緑黄色野菜を油で炒めたり、ドレッシングをかけたりして食べるといいでしょう。
日々の食事でバランスをとることが難しい場合は、サプリメントを活用することをおすすめします。
五大栄養素を意識して、栄養バランスを整えよう
五大栄養素は、健康維持と成長に不可欠な栄養素です。それぞれの役割と特徴を理解し、多様な食品をバランス良くとることが、すこやかな体を作るための基本となります。
日々の食事で五大栄養素の過不足を意識し、必要に応じて食生活を見直してみてはいかがでしょうか。
よくある質問(FAQ)
五大栄養素とは何ですか?
五大栄養素とは、炭水化物、たんぱく質、脂質、ビタミン、ミネラルの5つの栄養素です。これらは、体を動かすエネルギー源になったり、体を作る材料になったり、体の調子を整えたりと、それぞれが重要な役割を果たしています。
五大栄養素を効率良くとるにはどうすればいいですか?
五大栄養素を効率良くとるには、主食・主菜・副菜をそろえて、多様な食品を組み合わせるといいでしょう。
また、栄養素の吸収を助ける食品同士を組み合わせることも有効です。例えば、鉄とビタミンC、カルシウムとビタミンDといった組み合わせが挙げられます。
サプリメントで五大栄養素を補うのは有効ですか?
忙しい生活の中で、食事だけでは五大栄養素をバランス良くとることが難しい場合に、サプリメントは有効といえます。ただし、サプリメントはあくまで補助的なものであり、基本はバランスのとれた食事が重要です。なお、過剰摂取にならないよう、摂取量には注意が必要です。
この記事の監修医師
松田明子
専門は美容皮膚科、腎臓内科、内科。
東京女子医科大学卒業。大学病院、都内総合病院勤務を経て2017年都内美容クリニック院長に就任。
2023年3月よりsenshin clinicの美容皮膚科医長に就任。
所属学会:日本内科学会(認定医)、日本透析医学会(専門医)、日本腎臓学会(専門医)、日本再生医療学会(会員)、日本抗加齢学会(会員)、日本美容皮膚科学会(会員)