中高年は栄養不足になりやすい?
健康リスクやセルフチェック法を紹介
中高年は栄養不足になりやすい?健康リスクやセルフチェック法を紹介
「中高年」というと、何歳くらいの人を思い浮かべますか?実はこの言葉に明確な定義はありませんが、厚生労働省の「健康日本21(総論)」では、45~64歳を中年期、65歳以上を高齢期としています。
中高年になるとさまざまな体調の変化に直面しますが、自分では気がつきにくいのが栄養不足です。栄養不足は、疲れやすさや筋力低下、免疫機能の低下など、さまざまな健康上のリスクを高める要因となります。
この記事では、中高年が栄養不足になりやすい理由や、健康上のリスクについて紹介します。また、自分の栄養状態を客観的に把握するためのセルフチェック方法や、活力ある毎日を過ごすために今日から実践できる生活習慣の改善ポイントについても見ていきましょう。
中高年が栄養不足に陥りやすい理由
中高年が栄養不足になりやすい主な理由として、カロリー摂取量の減少と栄養素の吸収効率の低下という2つが挙げられます。
カロリー摂取量が減少する要因は、加齢に伴う身体機能や食生活の変化です。
加齢に伴い、食べ物を噛む咀嚼(そしゃく)機能や、飲み込む嚥下(えんげ)機能が低下すると、カロリー摂取量の減少につながります。さらに、加齢に伴って食欲が落ちたり、あっさりしたものを好むようになったりすることも、カロリー摂取量が減る要因です。
栄養素の吸収効率の低下は、持病そのものの影響や治療薬の副作用により、食べ物の消化・吸収機能が衰えると起こりがちです。中高年は、若年層に比べて持病があることが多く、栄養不足になる可能性が高まります。
栄養不足が中高年の健康に及ぼす主なリスク
中高年期における栄養不足は、すぐに目に見える変化として現れにくいものの、全身の健康にさまざまなリスクを及ぼします。ここでは、どのようなリスクがあるか見ていきましょう。
疲れやすさ・だるさ
糖質、脂質、たんぱく質やビタミン類が不足すると、活動に必要なエネルギーが体内で生成されず、疲れやすさ・だるさにつながるだけでなく、筋肉量の減少も起こります。また、鉄分が不足すると貧血の状態になり、疲れやすさ・だるさが起こりがちです。
皮膚や髪の乾燥
皮膚の乾燥や髪のパサつきといった変化は、ビタミンA、ビタミンB群、ビタミンEの不足が関係しているかもしれません。これらのビタミンが不足すると、細胞の修復機能が低下し、肌や髪の健康維持が難しくなります。
筋力低下
たんぱく質やビタミンB6・C・Dが不足すると、筋肉の合成がうまく行われず、筋力低下につながります。筋力が低下すると活動量が減り、さらなる筋力低下を招くという悪循環に陥ることも。また、栄養不足はサルコペニア(骨格筋量の低下と筋力・身体機能の低下)という状態を招き、転倒などのリスクを高めます。
睡眠の質低下
ビタミンB群やマグネシウム、およびアミノ酸は、睡眠に関わる神経伝達物質であるセロトニンやメラトニンの生成に欠かせません。これらが不足すると、入眠しにくい、途中で目が覚めるなどの睡眠障害が起こりやすくなります。
睡眠の質が低下すると疲労が取れず、それが食欲不振やホルモンバランスの乱れを招き、さらに栄養不足が進行するという悪循環に陥りかねません。
骨粗しょう症(こつそしょうしょう)

骨(こつ)細胞は、古くなったものが新しいものに入れ替わることで常に生まれ変わっています。具体的には、破骨(はこつ)細胞が古くなった骨細胞を溶かして吸収することを骨吸収、骨芽(こつが)細胞が新しい骨細胞を作ることを骨形成といい、骨吸収と骨形成のサイクルを骨代謝回転といいます。骨形成にはカルシウムとビタミンDが必要ですが、これらが不足すると骨吸収のスピードに骨形成が追いつかず、骨密度の低下や骨粗しょう症のリスクが高まります。
特に閉経後の女性は、ホルモンバランスが変化する影響で骨代謝が急速に低下するため、注意が必要です。
免疫機能の低下
栄養不足は、体の防御機能である免疫機能の低下に直結します。たんぱく質不足は、免疫細胞そのものの材料不足を招き、防御機能を弱めます。また、ビタミンA・C・D、亜鉛が不足すると免疫機能が低下し、風邪や感染症のリスクが高まります。
さらに、慢性的な栄養不足は、病気からの回復力も低下するでしょう。
<免疫機能の維持に役立つ栄養素が多く含まれる食品>
・ビタミンA:鶏レバー、豚レバー、うなぎ、にんじん、ほうれん草、かぼちゃ など
・ビタミンC:赤ピーマン(赤パプリカ)、黄ピーマン、ブロッコリー、じゃがいも(ゆで)、キウイフルーツ、いちご など
・ビタミンD:鮭(サケ類)、いわし(缶詰含む)、サンマ、干ししいたけ、きくらげ(乾) など
・亜鉛:牡蠣(生)、牛肉(肩ロース・もも等)、豚レバー、玄米、納豆 など
※参考:文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」
生活習慣病
栄養不足は、生活習慣病のリスクを高める一因ともなります。特にカリウム、マグネシウム、カルシウムなどのミネラルが不足すると、血圧上昇や血糖コントロール不良などを引き起こしかねません。
<ミネラルが多く含まれる食品>
・カリウム:バナナ、アボカド、ほうれん草、かぼちゃ、じゃがいも、さつまいも など
・マグネシウム:アーモンド、カシューナッツ、ひじき(乾燥)、大豆・大豆製品(納豆・木綿豆腐) など
・カルシウム:牛乳、ヨーグルト、ししゃも、いわし丸干し、小松菜 など
※参考:文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」
また、たんぱく質や食物繊維の不足は代謝を悪化させ、脂質異常や糖尿病の進行を促すことにつながります。
栄養不足のセルフチェック方法
栄養不足は疲れやすさやだるさを招きますが、その原因が栄養不足にあるかどうかは、自分自身では気づきにくいものです。特に中高年の場合、加齢に伴う変化として捉えてしまうことも少なくありません。そのため、日頃から栄養状態を客観的に把握するためのチェック方法を知っておくことが大切です。
日常生活でできるチェック
自分の栄養状態は、特別な器具を使わなくても日々の生活の中でチェックできます。
まず、食欲が落ちていないか、食事の回数や量が減っていないかを確認します。また、体調の変化も重要なサインです。具体的には、以前よりも疲れやすい、だるさを感じる、あるいは風邪をひきやすいといった状況を意識しましょう。
さらに、顔色の悪化や体重の減少、筋力(握力)の低下といった身体的な変化にも気を配る必要があります。
BMIや体重計測によるチェック

栄養状態の客観的な指標としては、BMI(Body Mass Index:肥満度を示す指標)や体重を定期的に計測することが有効です。
BMIが18.5未満の「低体重」に該当する場合や、特別なことをしていないのに半年以内に3kg以上の体重減少があった場合は、栄養不足に陥っている可能性があります。
急激な体重の変化は、体内のエネルギーやたんぱく質が不足しているサインです。定期的な体重測定と食事の記録を習慣化し、自分や家族の栄養状態を客観的に把握することが、健康維持につながります。
栄養不足を防ぐための食生活と生活習慣
前述したように、中高年の栄養不足の原因はカロリー摂取量の減少と栄養素の吸収効率の低下という2つが挙げられます。これらの対策としては、食生活はもちろん、それを支える生活習慣全体を見直すことが重要です。
バランスの良い食事の仕方
栄養不足を解消するための基本は、毎日の食事で必要な栄養素を過不足なくとることです。主食・主菜・副菜をそろえ、エネルギー源となる炭水化物、筋肉の材料となるたんぱく質、体の調子を整えるビタミン・ミネラルをバランスよくとることを意識しましょう。
厚生労働省と農林水産省が作成した食事バランスガイドを参考にすると便利です。
また、食事に赤いトマト、緑のほうれん草、黄色いパプリカといったように色の異なる食材を組み合わせることで自然に栄養素の種類が増え、食欲も刺激されます。食欲が落ちて量が食べられないときは、消化の良いスープやおかゆ、あるいはたんぱく質を加えた軽食などで少量ずつ補給しましょう。
栄養素については、こちらの記事をご覧ください。
五大栄養素とは?その働きや種類、食生活への役立て方を紹介
適度な運動習慣の取り入れ方
適度な運動は体の代謝を高め、食欲を増進させるため、栄養不足の改善に有効です。ウォーキングや軽い筋トレを週2~3回取り入れるといったように、無理のない範囲で継続することが筋力維持と代謝向上につながります。
睡眠の質を高める生活リズムの整え方
質の良い睡眠は栄養素の吸収と代謝に深く関係しており、体全体の回復を助けます。
質の高い睡眠を得るため、寝る前のカフェイン摂取やスマートフォンの使用を控え、リラックスできる環境を整えましょう。
眠れないときの対処法については、こちらの記事をご覧ください。
眠れないときの対処法は?おすすめの食べ物・飲み物、生活習慣を紹介
栄養をしっかりとり、活力ある毎日を過ごそう
中高年が陥りやすい栄養不足は、疲れやすさ、筋力低下、免疫機能の低下、骨粗しょう症、睡眠の質の低下など、多方面にわたる健康リスクを招きます。
栄養不足の予防と改善には、食生活の見直しだけでなく、適度な運動、質の良い睡眠という生活習慣全体の見直しが必要です。食事バランスガイドを参考にバランスの良い食事を心掛け、必要に応じてサプリメントや機能性表示食品を活用することも有効です。
今日からできる小さな工夫を積み重ねていくことが、健康寿命を延ばし、活力ある毎日を過ごすための第一歩となるでしょう。
よくある質問(FAQ)
中高年が栄養不足に陥る理由は何ですか?
中高年が栄養不足になる主な理由として、加齢に伴い食欲や食事量が減少すること、持病などにより栄養素の消化・吸収機能が低下しやすくなることが挙げられます。栄養不足は健康上のリスクを高めるため、注意が必要です。
栄養不足のチェックはどのようにすればいいですか?
栄養不足をチェックするには、普段から食欲や食事量、疲れやすさ、風邪のひきやすさなどの体調変化を意識しましょう。客観的な指標としては、BMI(肥満度を示す指標)や体重測定が有効です。BMIが18.5未満の「低体重」の場合、または半年以内に3kg以上の体重減少があった場合は、栄養不足の可能性があります。
栄養不足を防ぐために、日々の食事で気をつけることは?
栄養不足を防ぐためには、日々の食事で主食・主菜・副菜をそろえ、エネルギー源、たんぱく質、ビタミン、ミネラルをバランスよくとることが基本です。手軽な方法として、赤、緑、黄色など色の異なる食材を組み合わせることで、自然に多様な栄養素を摂取できます。食欲がないときは、消化の良いスープや軽食で少量ずつ栄養を補いましょう。
この記事の監修医師
松田明子
専門は美容皮膚科、腎臓内科、内科。
東京女子医科大学卒業。大学病院、都内総合病院勤務を経て2017年都内美容クリニック院長に就任。
2023年3月よりsenshin clinicの美容皮膚科医長に就任。
所属学会:日本内科学会(認定医)、日本透析医学会(専門医)、日本腎臓学会(専門医)、日本再生医療学会(会員)、日本抗加齢学会(会員)、日本美容皮膚科学会(会員)